特定投資家制度
金融商品取引法では、投資家の保護を図るため、金融商品取引業者に対し厳しい行為規制が課せられています。しかし、契約の相手方がプロの投資家である場合まで投資家保護を徹底する必要があるのでしょうか?
答えは「No」です。
そこで、金商法では、プロの投資家を「特定投資家」、アマの投資家を「一般投資家」と区分し、特定投資家には投資家保護の程度を軽く、一般投資家には程度を重くしています。
さらに、特定投資家は「一般投資家に移行できない特定投資家」と「一般投資家に移行可能な特定投資家」に、一般投資家は「特定投資家に移行可能な一般投資家」と「特定投資家に移行できない一般投資家」に区分されます。
投資家区分の確認 投資家区分毎の対応 期限日の管理
ポイント①
金融商品取引業者は、契約の相手方が次の4つの投資家区分のいずれに属する顧客なのか確認します。
特定投資家 |
①一般投資家に移行できない特定投資家 |
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②一般投資家に移行可能な特定投資家 |
一般投資家 |
③特定投資家に移行可能な一般投資家 |
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④特定投資家に移行できない一般投資家 |
②③の投資家は、一定の手続きを行うことによって投資家区分を変更することができます。
ポイント②
投資家区分を確認した結果、契約の相手方が上記②③に該当した場合の注意点は次のとおりです。
投資家区分
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投資家区分を変更できる旨の告知 |
投資家区分の変更依頼に対する貴社の対応
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②
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告知義務を負う |
変更を許可しなければならない(承諾義務) |
③
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告知義務を負わない |
変更の可否を判断しなければならない(判断義務) |
金融商品取引業者は、③の投資家からの投資家区分の変更依頼に対し、社内で検討した結果、変更依頼を拒否することもできます。
ポイント③
上記②の顧客が投資家区分を変更した場合、その効果は顧客の申出があるまで有効になります。
上記③の顧客が投資家区分を変更した場合、その有効期間は原則1年間です。
ただし、それ以前でも 、顧客の申出により一般投資家に戻ることができます。
例)投資家区分③の顧客から投資家区分の変更を依頼され、金融商品取引業者がその依頼を承諾した場合
金融商品取引業者は、その承諾日から1年間に限り、顧客を特定投資家として取扱います。
1年を超えると金融商品取引業者は、顧客を一般投資家として取扱います。
特定投資家に適用されない行為規制
特定投資家は、金融取引のプロです。プロである限り一般投資家のように手厚く保護される必要はありません。
そこで特定投資家には、損失補てん等の禁止といった市場の公正確保を目的とした規制を除き、次の主な行為規制が適用されません。
広告等の規制
不招請勧誘の禁止
勧誘受諾意思確認義務
再勧誘の禁止
適合性の原則
取引態様の事前明示義務
契約締結前の書面の交付
契約締結時等の書面の交付
保証金の受領に係る書面の交付
書面による解除
最良執行方針記載書面の交付
顧客の有価証券を担保に供する行為等の制限
投資顧問契約の相手方の場合
金銭又は有価証券の預託の受入れ等の禁止
金銭又は有価証券の貸付け等の禁止
投資一任契約の相手方の場合
金銭又は有価証券の預託の受入れ等の禁止
金銭又は有価証券の貸付け等の禁止
運用報告書の交付
顧客からの取引に関する照会に対して速やかに回答できる体制が整備されていない場合、自己の財産と顧客の財産を分別して管理する体制が整備されていない場合等には、行為規制が適用されます。
